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スキャナーダークリー

さて久しぶりの更新であります。
最近は、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『時計仕掛けのオレンジ』『2001年宇宙の旅』『グエムル』を一緒くたにして煮詰めたような新井英樹氏の怪作マンガ『真説ザ・ワールド・イズ・マイン』を全巻かため読みしたり↓

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻
真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻

ハーラン・エリスンのヴァイオレンスSF短編集、
『世界の中心で愛を叫んだけもの』を読んだり
(バカ売れした小説『世界の中心で愛をさけぶ』は、このハーラン・エリスンの小説の題名からとったものだと思うのですが、内容は全く正反対であります。)

世界の中心で愛を叫んだけもの
世界の中心で愛を叫んだけもの


と、脳内かなりヤバいことなっていましたが、さらに極めつきとして、フィリップ・キンドレッド・ディック原作、リチャード・リンクレイター監督(『スクール・オブ・ロック』『ビフォア・サンセットの監督です。)の『スキャナーダークリー』を観てまいりました。
クローネンバーグの『裸のランチ』、

裸のランチ
裸のランチ

ギリアムの『ラスベガスをやっつけろ!』

ラスベガスをやっつけろ
ラスベガスをやっつけろ

とあわせて、三大ドラッグムービーと命名したいほどイカれた映画でありました。(『スキャナーダークリー』はドラッグ賛美映画ではなく、実際に多くの知人を亡くし、自らも麻薬中毒者であったディックの悲痛な鎮魂歌とも言うべき映画でありますが…。)
この映画はロトスコープという、技法を使ったアニメーション作品。まず俳優の演技を撮影し、パソコンでその映像にデジタルペインティングを丹念にほどこしてゆく手法がとられているわけですが、これがもうドラッギーな雰囲気を醸し出すのにピッタリといえる手法で、俳優達の、トんでてヤバい演技をさらに加速させていました。実写の上にペインティングしていることで、画面全体が、二重に見えるというか、揺らいで見えるというか…なんとも不可思議な映像で、ビールとか飲んで酔っぱらって見たりすると、かなりヤバい感じです。特にロバート・ダウニーJr.の膨大妄想演技は、アニメーション効果と合わさって、かなりブッ飛んでました。(ドラッグ所持で何度か逮捕されてたその昔、この人ほんまにこんなんやったんやろなあ…。演技いうより、地でやってんのちゃうの?って感じがなきにしもあらずでありました…。)ナチュラル・ボーン男、ウッディ・ハレルソンのゲロがつまって死にかけるダメ人間っぷりも、「ああ…もう…めちゃくちゃやん…!」と心の中で叫んじゃうくらいイかしてました。あとキアヌ・リーヴスの、ただ、のぼっとつっ立ってるだけの演技もドラッグ中毒者なリアル。紅一点、万引きセレヴ、ウィノナ・ライダーは出演しているだけでグッド!。(彼女は画面に映っているだけで僕的には完全オッケー。)重度のジャンキーを演じたロリー・コクレンの目の動きも「あちゃ〜…」大丈夫なの?ほんとにこの人…?って思わせまくりで、出演者全員、終始物質Dなるドラッグに溺れまくってる様は、見ていてたまらなく滑稽でおもしろいものの、よくよく考えると人間存在否定した怖さだったりいたします。そして、なんといっても『未来世紀ブラジル』をも思わせる悪夢的な救い無きラストが素晴らしすぎるというか、後味悪すぎると言うか…。自らがドラッグに耽溺していた実体験を近未来SF作品へと昇華させ、それが現代社会への痛烈な皮肉へとなり得ている、フィリップ・K・ ディックのスゴさを、いまさらながらに痛感させる映画でありました。コメディにラブストーリーにドラッグムービーになんでも器用に撮れちゃう(しかもどの作品も平均水準以上。)リチャード・リンクレイター監督の才能にも脱帽な100分間でありました。
エンドクレジットで流れるトム・ヨークの『ブラック・スワン』も泣かせます。

☆『スキャナーダークリー』のサイト↓
http://wwws.warnerbros.co.jp/ascannerdarkly/

☆『スキャナーダークリー』予告編↓


☆トム・ヨークの『ブラック・スワン』収録アルバムはコレ↓
ジ・イレイザー
ジ・イレイザー
トム・ヨーク

☆『スキャナーダークリー』のサントラ↓
(スコア盤なので『ブラック・スワン』等の歌ものは収録されてません。)
A Scanner Darkly
A Scanner Darkly
Graham Reynolds

☆フィリップ・K・ ディックの原作本↓
スキャナー・ダークリー
スキャナー・ダークリー
フィリップ・K. ディック, Philip K. Dick, 浅倉 久志
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