地上を渡る声
小池 昌代
小池昌代さんの最新詩集『地上を渡る声』を読了。
生まれ落ちた瞬間から人は死に向かっている。生きるということは、死を無自覚でありつつも心のなかに飼っているということ。(逆に死に飼い馴らされているとも言えなくもないが…)その当たり前でいて、普段、日常生活の中ではなかなか思い出せない、人間の決定的な事実を、小池さんの詩は思いださせてくれる。それも、恩着せがましかったり、威圧的なものいいであったり、諭すようにでもなく、ふと日常にこぼす一人ごとのようなかろやかさで。
決して説教臭くもなく、深く自分自身に言い聞かせるかのように。
日常のふとした瞬間に、生じる微細なズレを小池さんは見逃さず、ほのかに熱を帯びた言葉で詩にしたためる。
現実と自分との間にある、ほつれた隙間を優しく縫うように。
その言葉は言葉以上の意味を持って胸に迫ってくる。
小池昌代という人は、つくづくすごい詩人なのだと思う。