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プーシキン美術館展

先週、国際美術館へ『プーシキン美術館展』を観てまいりました。
印象派からフォービズムそしてキュビズムへと至る、近代絵画の一時代を総括したかのようなセルゲイ・シチューキンとイワン・モロゾフのコレクション展示は大作こそ少ないものの見応え十分!大興奮!
平日なのに人、人、人の大盛況ぶりには驚きました。
いやー、世界の大金持ちコレクターってのは、レベルが違いますね。マティスの部屋やピカソの部屋と題して、部屋の壁という壁にマティスの絵やピカソの絵が張り巡らされている、彼らのコレクションルームの白黒写真が紹介されていたんですが、あれじゃ、名画のありがたみがまるでありません…。まるでアイドルオタクが部屋中にお宝写真飾ってほくそ笑んでるのと同じっす…。なんかあまりの金持ちっぷりに笑けてしまいました。
『プーシキン美術館展』展示作品の中では、
ゴーギャンの『浅瀬(逃走)』が一番の好み。↓
ゴーギャンの絵は、この『浅瀬』と『彼女の名前はヴァイルマティといった』の2点(あと版画2点もあり。)が展示されていたんですが、『浅瀬』は構図といい、色の塗り重ね方といい、『彼女の名前はヴァイルマティといった』よりも完成度が高いように感じました。(『彼女の名前はヴァイルマティといった』も構図自体はすごいけれども、色の塗り重ねかたが若干あらめな印象を受けた。)ゴーギャンの色の使い方はほんと最高です。『浅瀬』の浜辺へと続く砂地に薄いピンク色を使うあたり、色彩感覚がとんでもなくロックな男です。
しかもその発色の奇麗なこと!実際のゴーギャンの絵を見ると、図版、本等で見る彼の絵は、その良さをまるで伝えきれていないのがよくわかります。本物にはタヒチを安住の場と定め、現代文明を忌み嫌った彼の人間性がそこかしこに潜んでいるのが感じられます。
まあ、人間的には画家を目指してからは、社会から完全にドロップアウト。(画家になる前は株株式仲買人としてけっこう稼いでいたのだが…。)金もなく、タヒチで14歳の少女を愛人にしたりと、ロリコンで完全なる社会生活不適合者な男だったわけですが…。しかし、そういった人間的な歪みがあったからこそ、逆に彼の絵の輝きは増すように思います。心根の優しい、品行方正な人間が素晴らしい絵を描けるかといったら、そうとは言い切れないように、才能というものは人間性と必ずしも一致するわけではありません。むしろ何処か破天荒な、ネジの外れた人間に、天才的な才能を持った人物が多いというのは、神様も人が悪いというか、なんというか…。だからこそ、世界や人間の心は謎に満ちていておもしろいのかもしれません。
図版や、本で見るよりもイイ!と思った絵のもう一つは、
アンリ・ルソーの、
『セーヴル橋とクラマールの丘、サン=クルーとベルヴュの眺め』↓

この絵はパリ郊外のセーヌ川にかかるセーヴル橋の秋の情景を描いた作品です。空には飛行機、気球、飛行船がのどかに飛んでいるんですが、こんなに近い位置でそれらが一緒に浮かんでいるなんて、冷静に考えると何処かヘンで妙に幻想的。空のグレーが非常にきいていて、このグレーが画面全体に静謐さを醸し出してました。素朴で幻想的な絵です。
アンリ・ルソーはパリで税関職員をしながら休日に絵を描いていた、いわゆる「日曜画家」だったんわけですが、普通の日曜画家が、こんな幻想的な絵を描ける訳ねえじゃん!と思っちゃいます。彼の描くほとんどの作品は遠近法まるで無視。雑誌や写真、絵本などをもとに作り上げたコラージュ異世界です。ルソーの絵を見ていると不思議な感慨におそわれます。
絵画教育を受けていない彼の素朴でありながら夢想者の狂気を静かに孕んだ絵は、アウトサイダーアートともっとも近い位置にあるんじゃないかなあと個人的には思います。
そのほかにも近代絵画の父とよばれるポール・セザンヌのサント=ヴィクトワール山の絵もあり、モネ『白い睡蓮』、マティスの『金魚』ピカソ『アルルカンと女友達』などなど。実に多彩な作品群が目白押し!
正直、今回展示の目玉でもあるマティスの『金魚』の良さは僕にはわかりませんでしたが…。↓

マティスといえば初期作品『ブローニュの森の小道』も展示されていたんですが、こちらはフォービズムの面影残る良品。どちらかというとこちらの方が好きです。
そうそう、同時開催で収蔵作品展『コレクション4』も開催されていたんですが、こちらは人影がまばら…。プーシキン展チケットでこっちのも観れるのに、案外みなさん素通りっす。ジョルジョ・モランディの静物見れるし、カンディンスキーの『絵の中の絵』も見れる、現代美術では、ブラーのベストアルバムジャケ↓

ザ・ベスト・オブ

で有名ジュリアン・オピーの作品、ポール・オースターの小説『リヴァイアサン』の登場人物マリア・ターナーのモデルとなったアーティスト、ソフィ・カルの『B.C.W』も見れちゃう(これは『リヴァイアサン』でのマリア・ターナーの行動を実際にソフィ・カルが実行し作品化したもの。ポール・オースターの造り出した虚構をモデルとなったソフィが、自ら現実に再構築するという試み。)

リヴァイアサン
リヴァイアサン
ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸

本当の話
本当の話
ソフィ カル, Sophie Calle, 野崎 歓

なんとレイチェル・ホワイトリード
の作品も!(これは小品でちょっとがっかり…。)そしてなんと言ってもジョセフ・コーネルの『カシオペア』も展示されてる!
しかし、裏側が見えない展示とは…。この作品には裏側にも天体図のコラージュがあり、それも見れるように展示してほしかったですね。残念です。

これから国際美術館へ『プーシキン美術館展』を見に行かれる方は常設展示もじっくり見ることをおすすめします。意外と面白いですよ!

☆『プーシキン美術館展』
■国際美術館→http://www.nmao.go.jp/
■会期 2006年1月11日(水)〜4月2日(日)
■開館時間 午前10時〜午後5時、金曜日は午後7時(入館は閉館の30分前まで)
■休館日 毎週月曜日
■一般問い合わせ ハローダイヤル 06-4860-8600
■観覧料 
当日 一般1400円  大学・高校生1000円 中学・小学生500円
前売・団体 一般1200円 大学・高校生800円 中学・小学生300円

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