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わがタイプライターの物語 ポール・オースター


わがタイプライターの物語
ポール・オースター, 柴田 元幸

ポール・オースターの『わがタイプライターの物語』を読了。
コンピューターは使わず、未だに旧式のオリンピア・タイプライターで小説を清書しているポール・オースターの、そのオリンピア・タイプライターについてのエッセイのような物語。画家であるサム・メッサーの絵が幾つも載っていて、二人のコラボレーション画文集の趣き。サム・メッサーはポール・オースターのタイプライターの形に、強く惹かれたらしく、この本に載っているのは、ほとんどオリンピア・タイプライターの絵。それも油絵の具をチューブから直接塗りたくったような、もこもこと盛り上がったマチエールのものばかりで、まるでタイプライターが生きていて、蠢いているかのような迫力。
なんとも不思議で力強い絵で非常に実物が見てみたくなった。
(そういえば、デイヴィッド・クローネンバーグの映画『裸のランチ』でもタイプライターが蠅のような虫へと変化していくシーンがあったなあ…となんとなく思い出す。文字を打ち込む時のカシャッ、カシャッと鳴る小気味のいい音が虫の鳴き声、作家の紡ぐ物語を次から次へと紙に打ち付け、吐き出す上部の部分は何処か無機的というよりも有機的な生き物の口の形に見えなくもない。)
また、これらのタイプライターの絵のタイトルに『ムーン・パレス』『最後の物』などのタイトル名もあったりして、ポール・オースターファンである僕は、なんともうれしくなってしまった。ただ内容は30分もあれば読めてしまう、タイプライターに関する軽めのエッセイなので、ポール・オースターファン以外の人にはちょっと物足りない本かもしれない。やはりポール・オースターのおもしろさは長編ものにあると思う。
はやく、未翻訳である長編『Timbuktu』の柴田元幸先生訳が読みたいなあ!

☆サム・メッサーのタイプライターの絵はこんな感じです。↓
http://www.nielsengallery.com/db/Messer/e1202.html




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