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パウル・クレー展  線と色彩

先週、大阪梅田の大丸ミュージアムへ、
『パウル・クレー展  線と色彩』を見にいきました。
今回の展覧会は、スイスのベルン郊外に完成した、
『パウル・クレー・センター』↓
http://www.myswiss.jp/d/news/news.php?id=359
の会館記念として開催されたもの。
パウル・クレーは1879年、スイス生まれの画家です。
父がドイツ人の音楽教師、スイス人の母が音楽学校で声楽を学ぶという音楽一家に育ち、クレーも幼少時代からバイオリンを習い、オーケストラで演奏するなどしており、青年期、音楽家か芸術家になるか悩んだ末、絵の道を選んだ経緯があります。(彼の絵からどことなく音楽的なイメージが感じられるのは、そういった家庭環境に育ったからだと思います。) 
W・カンディンスキーや、モホリ=ナギらとともにドイツの造形芸術学校、バウハウスで教鞭を執っていたこともあり、薄い絵の具を何層にも塗り重ねた淡い色彩の詩的な絵、幼い子供が無邪気に筆を走らせたかのように楽しげで、音楽的なイメージを喚起するドローイング作品などが有名です。
クレーは、ヒトラー政権下のドイツで頽廃芸術の烙印を押され、人間の狂気を描いた画家オットー・ディックス、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、エミール・ノルデ、彫刻家エルンスト・バルラハ(現在、バルラハの展覧会が京都国立近代美術館で開催されています。↓
http://www.momak.go.jp/0602-Elnston_j.html
などの芸術家と同様、ナチスの弾圧を受け、生まれ故郷のスイスへと逃れています。しかし、そういった、つらい経緯があったにも関わらず彼の絵は、どの作品を見てもとても穏やか。困難な状況に置かれても創作意欲を失わず自分のスタイルを見失わないところに、クレーの真の芸術家としての強さがあるのかも知れません。
スイス帰還後は皮膚硬化症という難病に冒され一時は制作を断念するも、晩年の2年間は精力的に絵画制作に取り組み、自らの死を予感したかのように数々の天使の絵やドローイングを描きます。その天使の絵やドローイングのほとんどが、どれも信じられないくらいに無邪気な形をしていて、とてもかわいらしい。それが逆にクレーの生きることに対する祈りのようにも感じられて僕は強く胸を打たれます。
今回の展示は、初期作品から、晩年の作品までをうまくとりまぜた展示で、なかなか見応えがありました。(チュニジア旅行後の色彩の変化などもわかり勉強になりました。)クレーの線描のセンスは素晴らしいです。この人は、ほんとに、ただ絵を描くことが好きなだけなんだなあ…。ということを強く感じさせてくれます。そして絵画技法に対する探究心のおたくっぷりにはほんと頭が下がります。(自ら描画道具を作ったり、あらゆる技法をためしたり。)
クレーは1940年6月、南スイスの療養先でスイスへの帰化を願いながらも、最終的な手続きが完了出来ないままドイツ人として生涯を閉じています。ナチスに迫害されドイツを追われ、しかもスイス人となれなかった晩年のクレーのつらさを推し量ることは出来ませんが、現在、世界的に認められ愛され続けている彼の作品からは、もはや彼が何人であるかといったことに関係なく、クレー、一個人としての存在の大きさ、素晴らしさを感じさせてくれているように思いました。

☆パウル・クレー展 ― 線と色彩 ―
■会場:大丸ミュージアム梅田↓
http://www.daimaru.co.jp/museum/schedule/umeda/index.html
■展覧会期:2006年3月5日(日)→21日(火・祝)
■開館時間:午前10時→午後7時30分(8時閉場)
※最終日は午後4時30分まで(5時閉場)
■入場料:一般900円 、大高生700円、中学生以下は無料。
 
☆『パウル・クレー・センター』開館記念出版されたクレー本。
今回の展覧会の図録のような役割の本です。↓
クレーART BOX―線と色彩
クレーART BOX―線と色彩
日本パウルクレー協会
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パウル・クレーの芸術―その画法と技法と
パウル・クレーの芸術―その画法と技法と
西田 秀穂

ヒトラーと退廃芸術―「退廃芸術展」と「大ドイツ芸術展」
ヒトラーと退廃芸術―「退廃芸術展」と「大ドイツ芸術展」
関 楠生
書いた人 a | comments(1) | trackbacks(2) |




コメント

TBに対してのコメントありがとうございました。
パウル・クレーについては、昔読んだ吉行淳之介の「砂の上の植物群」という小説の中でテーマとして取り上げられていたのがきっかけで興味だけはあったのですが貴ブログにより詳細なプロフィールを知ることができました。「退廃芸術」の烙印を捺された諸作品の中でも、とりわけパウル・クレーの絵画にはデカガンスの匂いが微塵も感じられず、どこが退廃なのか全く理解に苦しみます。スターリンも社会主義リアリズム以外の芸術はすべて反革命的と断罪しましたが、どうも20世紀の独裁者は芸術に干渉するという共通点があるようですね。

下等遊民 | 2006/05/11 4:15 PM


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「抽象画」と云えば想起するのはカンディンスキーとこのパウル・クレー。  ただ、同じジャンルでも、前者が洗練と計算、そしてどこか暗さを感じるシュルレアリズム的な作風なのに対し、クレーは素朴で幼稚園児の様な無邪気で暖かみのある雰囲気の作品が多い。麻布に描
下弦の憂鬱 | 2006/03/18 5:43 PM

時たま顔を出す古書店で「ナチスが捺した退廃芸術の烙印」 という特集に惹かれ「芸術新潮」1992年9月号を購入。 シャガール、クレー、キルヒナー、ノルデなどナチスから目の 敵にされた近代絵画の諸作品が紹介されていてナチズムを支え たメンタリティの一端を垣
サブカル雑食手帳 | 2006/05/09 7:34 AM




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