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アルベルト・ジャコメッティ展 矢内原伊作とともに

うちの猫もばてる熱波襲う昼下がり↓

兵庫県立美術館へ『アルベルト・ジャコメッティ展』を観に行って参りました。

☆兵庫県立美術館のサイトはコチラ↓
http://www.artm.pref.hyogo.jp/home1.html

十代〜二十代にかけての初期の油彩にはじまり、(図版で見たものと違い、実物は発色が非常に奇麗ですばらしかったです!弟ディエゴの肖像画『スタンパの居間に立つディエゴ』のディエゴの着ているスーツの臙脂色に、父親の肖像画『作家の父』の背景のみずいろの美しさは、ジャコメッティの油彩画のイメージが、後期のグレーを基調とした暗めの色彩にあった僕にとってかなりの衝撃でした。) 
シュルレアリストとして名声を得た頃の作品群、
そしてシュルレアリスム的作品から離れ、ジャコメッティ独自の地位を美術史に築いたといえる、ひょろ長い、肉をそぎ落としたかのように見える人体彫刻群、(見ているだけで、彫刻そのものの重みを感じられる、彫刻自体の存在感に
僕のやわなハートは鷲掴みっ!
されまくりでありました。本などの平面図版と違い、立体的に見れ、しかも、指の跡が生々しく残る彫刻の裏面のマチエールが見れたのはまさに至福の極みです!)
”見えるものを見えるままに描く”といった哲学的行為に突き動かされて描き続けた油彩&ドローイングの数々…(なかには新聞や紙ナプキンに走り書きしたドイローイングも。)と非常に興味深い内容でした!
とくに1956年〜61年の間に数回モデルを務めた日本人哲学者、ヤナイハラ氏を描いた油彩・彫刻・ドローイングには、ジャコメッティとヤナイハラ氏の芸術家とモデルとしての緊張関係が、尋常ではなかったことがグレーを基調とした静謐な画面全体から感じられて、非常に素晴らしかったです。
ジャコメッティのモデルを務めるのは大変だったらしく、長ければ朝っぱらから深夜にわたるまで、ヤナイハラ氏は同じポ−ズをとり続けることもあったらしいです。
絵筆を握っているジャコメッティが熱に浮かされたように筆を走らせたことは想像にがたくないですが、”物”としての存在を強いられ、延々同じポ−ズをとり続けたヤナイハラ氏の思考は一体どのようなものだったのだろうか?と考えてしまいました。
ジャコメッティの妻アネットや、弟のディエゴもモデルを務めていましたが、彼等は2〜3時間で苦痛を訴えたらしいです。しかし、ヤナイハラ氏はそのような訴えをせず、相対するジャコメッティの眼光と対等に渡り合いました。これは明らかに友情以上の絆、彼等の思想なり、哲学が同じ方向を向いていたからこそ、できたことなのでしょう。そしてそのヤナイハラ氏の”物”に徹し続けた強固な意思にジャコメッティは、”見えるもの、その存在そのもの”を描くという行為で答えようとしました。この二人の関係って…なにか夫婦とかそういう制度的なものよりも、スゴイものを感じます。同志愛というか…それ以上の愛情が二人の間にはあったのだと思います。

あと、展示作品の中にはカロリーヌを描いた油彩画も展示されていました。このカロリーヌという人物は、娼婦でありジャコメッティの愛人であった女性です。妻のアネットはジャコメッティの死後、彼の財団を設立するのが願いであり、彼の多くの作品を保存管理していました。おそらくこのカロリーヌの油彩画も彼女が一度保存していたはずで、夫が描いた愛人の絵を妻であるアネットはどのように見て、感じていたのか?ってのも興味を引くところです。(もっとも、アネットは、ジャコメッティに愛人がいようが意に介さない懐の太い女性だったようですが…実際のところはアネット本人にしか分からない感情もあったはずだと思います。また、ヤナイハラ氏とアネットにも微妙な愛情関係があったらしく、ジャコメッティ・ヤナイハラ・アネットと彼等の関係は、ジャコメッティの芸術の上に複雑に絡み合っていたようです。)う〜ん!天才芸術家の愛憎関係って、なんか…
昼ドラみたくてスゲエおもしれえ…!

ってことで、暑いお盆にアルベルト・ジャコメッティ展、館内は涼しいし、天井高いし、彫刻すげえ細いし、昼ドラみたいやし、で最高でありました。



美術館の硝子窓に映り込む真夏の空…夏です!↑

☆A.のジャコメッティに関する過去記事はコチラ↓
http://akirart.blog.bai.ne.jp/?eid=56409


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ホイットニー美術館展

マーク=ロスコ、旧名、マーカス=ロスコヴィッツ 
親戚を頼りにアメリカへ移住していた父ジェイコブの後を追って、ロシアからアメリカに移住して来た移民の子。どんな気持ちだったのだろう?十歳で故郷を捨て、新しい国の土を初めて踏んだ少年、ロスコの思いは?その後、抽象画家として遅咲きとはいえ世界的な成功を収め、六十六才で自ら命を断ったロスコ。初めてアメリカに降り立った時には、希望と不安で心がいっぱいで、自ら命を断つことなど思いもしなかったろう。どんな思いを胸に携えて、彼はこの世を後にしたのか・・・。芸術が狂気に走らせたのか?
狂気が芸術を蝕んでしまったのか?
兵庫県立美術館に飾られたロスコの作品、
『ナンバー4(無題)』
淡い黄色の矩形を、薄い白色の帯が囲む上部。オレンジ色の長方形の下、艶のない黒がカンバスの下部を引き締める。269.24x129.22cmの巨大なカンバスに、黄、オレンジ、黒、オレンジが時に解け合うかのように、時に反発するかのように存在している。
制作年は1953年。彼は1970年に死んでいるから、『ナンバー4(無題)』は、その十七年前に描かれたものだ。年令でいうと、五十歳。四十六歳の頃に、彼はやっと自分のスタイルを確立する。この作品のような巨大なカンバスに、二つから三つのぼんやりとした矩形を描いた有名なスタイル。それから四年後の作品だから、一番油の乗っていた時期の作品だと言える。きっと彼もこの時が芸術家として一番幸福だったんじゃないだろうか。静寂と瞑想。ロスコ作品の前では、誰もが哲学者になりえる。自らが世界の何処かに存在していることを、朧げに指し示してくれるロスコの色彩。ロスコの死後も、時間を超えてそれはカンバスと、それを包み込む会場の空気に存在している。芸術家は死してもなお、自らの思いを、願いを、思索を、後世に残す。カンバスに記された朧げな色の痕跡によって。 


☆『アメリカ-ホイットニー美術館コレクションに見るアメリカの素顔』展会場入り口↓

先週、兵庫県立美術館に、『アメリカーホイットニ-美術館コレクションに見るアメリカの素顔』展を見てまいりました。つまらなく、怠惰で、どこかぬるま湯のようだった高校生時代に初めて知ったアメリカの現代美術。その頃に衝撃を受けたロバート・ラウシェンバーグにジャスパー・ジョーンズ。(彼らのアートには、その当時の僕には計り得ない、とてつもない自由さがあり、その時から僕は現代アートの虜になりました。)
マーク・ロスコにジャクソン・ポロック、
アンディ・ウォーホルにジャン=ミシェル・バスキア、
ジョージア・オキーフにエドワード・ホッパー、
デヴィッド・サーレにジュリアン・シュナーベルの作品etc…
とアメリカの抽象表現主義から、新表現主義へと移り行く、アメリカ現代美術の歴史を総括したかのようなコレクション展は実に興味深かったです。

個人的には、以下の4作品が心にグッときました。

◎1.ロスコの平面作品『ナンバー4(無題)』 

◎2.バーネット・ニューマンの立体作品『ヒア3』
抽象画家であったバーネット・ニューマンが立体作品を制作していたとは驚きでした。台形の台座の上に載ったステンレス製の垂直の柱。高さは約3mあります。
オベリスクのような、
無機質な墓標のような、たたずまいは圧倒的な存在感! 

◎3.ジュリアン・シュナーベル(映画『バスキア』の監督でもあります。ちなみに映画『バスキア』で、バスキア作品として登場する絵の数々はシュナーベルが描いたものです。)の平面作品『無題』
巨大なカンバス247.5x201.3cmに布に浸した樹脂を投げつけ定着させて制作した抽象画で、感覚的な構成力が見事!

☆そうそう、レッチリの『BY THE WAY』のジャケットもシュナーベル作品であります。↓
BY THE WAY
BY THE WAY
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

◎4.ジョエル・シャピロのブロンズ立体作品『無題(平原の家)』
53.0x73.3cmの銅の板の上に、小さな銅でできた家が置かれた作品。絶妙な大きさ、漂う静謐感。どことなく物語性を感じさせる作品性がグッド!! 


その他、映画『サーチ&デストロイ』↓を

サーチ&デストロイ
サーチ&デストロイ

撮ったデヴィッド・サーレの平面作品
『田舎町のセクスタント(六分儀)』、
写真家であるジャック・ピアソンの珍しい立体作品『欲望、絶望』なども展示されていて、個人的にはかなりストライクッ!!な展覧会でありました。

☆『アメリカ-ホイットニー美術館コレクションに見るアメリカの素顔』展
■会場:兵庫県立美術館→http://www.artm.pref.hyogo.jp/home1.html
■展覧会期:2006年4月4日(火)〜5月14日(日)
■開館時間:午前10時〜午後6時(金・土曜日は午後8時まで)
入場は閉館の30分前まで
■休館日:月曜日
■観覧料:一般 1,200円
     大・高生 900円
     中・小生 500円
 

マーク・ロスコ―1903-1970
マーク・ロスコ―1903-1970
ヤコブ・バール=テシューヴァ, Toshio Miyamoto



Julian Schnabel: Malerei / Paintings 1978-2003 (HATJE CANTZ)
Julian Schnabel: Malerei / Paintings 1978-2003 (HATJE CANTZ)
Julian Schnabel


Jack Pierson Desire/despair: A Retrospective: Selected Works 1985-2005
Jack Pierson Desire/despair: A Retrospective: Selected Works 1985-2005
Richard D. Marshall
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林俊作 画爆TERRO



☆林俊作 FIRST Exhibition in OSAKA 『画爆TERRO』
■開催:2006年4月13日(木)〜4月25日(火)
■時間:11:00〜20:00
■場所:HEP HALL (HEP FIVE 8F)
http://www.hephall.com/
■入場料:無料

友人である、U君&Uさんが「おもしろかった!」と言っていたので、林俊作 FIRST Exhibition in OSAKA 『画爆TERRO』展を最終日に見に行きました。林俊作君と言えば『たけしの誰でもピカソ』のアートバトルに出演してた少年として記憶にあったぐらい。
実際の作品を見るのは初めてです。
いや〜、とても13才の描く絵とは思えません!
マジックや絵の具で描いた絵にさらに、フォトショップでデジタル加工を加えた巨大平面作品。ティム・バートンのイラストとシュールレアリストのオートマティズム(自動記述)絵画をかけ合わせたようなドローイングがHEP HALLの壁面に所狭しと展示されていました。
もう絵を描くのが好きで好きでたまらない!って感じがビシビシと伝わってきました。
個人的には、コンピューター加工された作品よりも、黒ペン一色で描いたドローイング作品群が素晴らしかったです。俊作少年、天性の構成感覚を持ってます!見ていて13才でここまで描けるとは!!…と大人のわたくしちょっと嫉妬&驚愕でありました。13才の少年らしく、彼の自由研究帳(学校の課題で作ったっぽい。)なども会場に置いてあって閲覧できたんですが、アントニ・ガウディとか、ジョルジュ・メリエス(SFXの元祖『月世界旅行』で有名な、トリック撮影を開発したフランスの魔術師です。)、レイ・ハリーハウゼン(ストップモーション・アニメ映画の巨匠です。ハリーハウゼンを敬愛するティム・バートン監督の『コープス・ブライド』には、”ハリーハウゼン”と蓋の裏側に刻まれたピアノがでてきたり…。それくらいスゴイお人。)などの事を調べていて、
おいおいっ!どんだけ濃い〜中学生やねんっ!!
とツッコミの一つもいれてやりたくなりました。(しかも、イラスト付き、かつ、とても丁寧に調べていて、大人の僕が読んでもおもしろかったです。メリエスが、晩年はモンマルトルの駅の売店で売り子をやっていた!なんてトリビアも、俊作研究帳を読むまで知りませんでしたし…。)林俊作君13才。これからどんな大人に、人間になっていくのか?これから彼の絵はどんなふうに進化していくのか?と非常に楽しみなアーティストであります。(でも、こまっしゃくれた、底意地の悪い大人にだけはならないでほしいなあ…。まあ、そんな人物の方が、アーティストらしいっていえばアーティストらしいんだけれども…。) 

☆林俊作君のサイト↓
http://www1.odn.ne.jp/~haya4hello/

☆レイ・ハリーハウゼンの DVD↓
レイ・ハリーハウゼン DVDライブラリー Limited Box 1
レイ・ハリーハウゼン DVDライブラリー Limited Box 1  


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ニキ・ド・サンファル展

若いころファションモデルの仕事をしていたことは知っていました。
(『ヴォーグ』や『ハーパース・バザー』、『ライフ』の表紙を飾っていたとは、知りませんでしたが!)
美術館の常設展に飾られている、彼女のオブジェ作品を何度か見たこともありました。
その時は、特にこれといった感動も感慨もわかなかったのですが、今回、ペインティング、版画、オブジェなど、初期から後期までの変遷が辿られている回顧展で、ニキ作品の全体像を見て、わたくし、いたく、いたく感動いたしました!
いや〜、ほんと素晴らしい!!
おもわず図録も衝動買いです↓

(表表紙、裏表紙ともに少し弾力性を持たせた、フカフカ造本が面白くてイイ感じ!)

クリス・オフィリ(1998年にターナー賞(イギリスで審査される現代美術の賞。まあ映画でいうところのアカデミー賞みたいなもんです。)を受賞した画家。)のペインティングを彷彿とさせる初期作品、
☆『女性の肖像(自画像)』↓(左ページの作品)


◎ちなみにこれがクリス・オフィリ作品↓

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ジャスパー・ジョーンズの『標的(Target)』↓
http://www.smma-sap.or.jp/col2-2.htm
に、ニキの女性的な感情を味付けしたかのような、
☆『聖セバスチャン、あるいは私の愛人のポートレート』↓(右ページ)

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ルイーズ・ネヴェルスンの作品にも通ずる、アッサンブラージュ作品、
☆『カテドラル』↓(左ページ作品)


◎んでルイーズ・ネヴェルスンの作品がコレ↓

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など初期作品群は、当時のヌーヴォー・レアリスム、ネオダダなどの美術運動に影響を受けつつも、ニキ自身の表現を模索している感じが如実に表れていて、非常に興味深くおもしろかったです。特に『カテドラル』はニキが制作において、いつも念頭にあったでであろう、男性社会における女性性、権力のもとにある宗教の歪みがテーマの作品。機関銃を構えたおもちゃの兵隊、飛行機、消防車、怪獣、馬のおもちゃなどすべて男性性を象徴するかのようなものをこれでもかっ!!とたくさん貼っ付けて大聖堂(カテドラル)の形を作りあげていて、偏執狂的なパワー炸裂でかなりキテる作品でした。これらの初期作品から、彼女の代表作品ともいわれるナナシリーズへと至る過程は、見ていてほんとスリリング。鮮やかな色彩&丸みを帯びた魅力的な形を有するオブジェ、ポップな絵に内省的な言葉をちりばめた版画作品は、ついに彼女が自分のオリジナリティを見つけたといわんばかりのエネルギーに満ちあふれていて、ただただ圧倒されるばかりでありました。
☆ナナシリーズオブジェ↓

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ガウディの建築物、ボマルツォの『怪獣庭園』(イタリア、ローマ郊外にあるボマルツォという小さな街にある奇妙な庭園です。澁澤 龍彦氏が、度々本で紹介している場所です。)、シュバルの理想宮(郵便配達夫フェルディナン・シュバルが33年かけたった一人で作り上げた奇妙な宮殿ですね。)にインスピレーションを受けてイタリアに建設された、ニキ晩年のライフワーク『タロット・ガーデン』も前述の建築物同様、脅威の異相感を醸し出していてシビレまくること、このうえなしっ!いつか絶対訪れたいっす。↓

 
☆タロットガーデンのサイトはコチラ↓
http://www.nikidesaintphalle.com/

ボマルツォの怪物―澁澤龍彦コレクション 河出文庫
ボマルツォの怪物―澁澤龍彦コレクション 河出文庫
A・ピエール・ド・マンディアルグ, 澁澤 龍彦

☆郵便配達夫シュヴァルの本↓
郵便配達夫シュヴァルの理想宮
郵便配達夫シュヴァルの理想宮
岡谷 公二
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ニキ・ド・サンファル、僕は今回の展覧会を見るまで、この芸術家の事をかなりあなどってました…。
いや〜、実際、これだけの作品群を見せられるともう…ほんとスゲエッ!!と唸る意外ありません。まじカッコよかったっす!!↓

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☆『ニキ・ド・サンファル展』
■会場:大丸ミュージアム梅田↓
http://www.daimaru.co.jp/museum/index.html  
■展覧会期:2006年3月26日〜4月9日
■開館時間:午前10時→午後7時30分
※最終日は午後4時30分まで(午後5時閉場)
■入場料:一般900円(700円)、大高生700円(500円)、中学生以下無料

☆ニキ・ド・サンファル展、
2006年5月11日〜5月22日は大丸ミュージアム東京、
2006年6月17日〜8月15日は名古屋市美術館、
2006年8月22日〜9月24日は福井市美術館と巡回していくようです。
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☆栃木県にあるニキ美術館のサイトはコチラ↓
http://www.niki-museum.jp/


ニキ・ド・サンファル
ニキ・ド・サンファル
増田 静江
  
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パウル・クレー展  線と色彩

先週、大阪梅田の大丸ミュージアムへ、
『パウル・クレー展  線と色彩』を見にいきました。
今回の展覧会は、スイスのベルン郊外に完成した、
『パウル・クレー・センター』↓
http://www.myswiss.jp/d/news/news.php?id=359
の会館記念として開催されたもの。
パウル・クレーは1879年、スイス生まれの画家です。
父がドイツ人の音楽教師、スイス人の母が音楽学校で声楽を学ぶという音楽一家に育ち、クレーも幼少時代からバイオリンを習い、オーケストラで演奏するなどしており、青年期、音楽家か芸術家になるか悩んだ末、絵の道を選んだ経緯があります。(彼の絵からどことなく音楽的なイメージが感じられるのは、そういった家庭環境に育ったからだと思います。) 
W・カンディンスキーや、モホリ=ナギらとともにドイツの造形芸術学校、バウハウスで教鞭を執っていたこともあり、薄い絵の具を何層にも塗り重ねた淡い色彩の詩的な絵、幼い子供が無邪気に筆を走らせたかのように楽しげで、音楽的なイメージを喚起するドローイング作品などが有名です。
クレーは、ヒトラー政権下のドイツで頽廃芸術の烙印を押され、人間の狂気を描いた画家オットー・ディックス、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、エミール・ノルデ、彫刻家エルンスト・バルラハ(現在、バルラハの展覧会が京都国立近代美術館で開催されています。↓
http://www.momak.go.jp/0602-Elnston_j.html
などの芸術家と同様、ナチスの弾圧を受け、生まれ故郷のスイスへと逃れています。しかし、そういった、つらい経緯があったにも関わらず彼の絵は、どの作品を見てもとても穏やか。困難な状況に置かれても創作意欲を失わず自分のスタイルを見失わないところに、クレーの真の芸術家としての強さがあるのかも知れません。
スイス帰還後は皮膚硬化症という難病に冒され一時は制作を断念するも、晩年の2年間は精力的に絵画制作に取り組み、自らの死を予感したかのように数々の天使の絵やドローイングを描きます。その天使の絵やドローイングのほとんどが、どれも信じられないくらいに無邪気な形をしていて、とてもかわいらしい。それが逆にクレーの生きることに対する祈りのようにも感じられて僕は強く胸を打たれます。
今回の展示は、初期作品から、晩年の作品までをうまくとりまぜた展示で、なかなか見応えがありました。(チュニジア旅行後の色彩の変化などもわかり勉強になりました。)クレーの線描のセンスは素晴らしいです。この人は、ほんとに、ただ絵を描くことが好きなだけなんだなあ…。ということを強く感じさせてくれます。そして絵画技法に対する探究心のおたくっぷりにはほんと頭が下がります。(自ら描画道具を作ったり、あらゆる技法をためしたり。)
クレーは1940年6月、南スイスの療養先でスイスへの帰化を願いながらも、最終的な手続きが完了出来ないままドイツ人として生涯を閉じています。ナチスに迫害されドイツを追われ、しかもスイス人となれなかった晩年のクレーのつらさを推し量ることは出来ませんが、現在、世界的に認められ愛され続けている彼の作品からは、もはや彼が何人であるかといったことに関係なく、クレー、一個人としての存在の大きさ、素晴らしさを感じさせてくれているように思いました。

☆パウル・クレー展 ― 線と色彩 ―
■会場:大丸ミュージアム梅田↓
http://www.daimaru.co.jp/museum/schedule/umeda/index.html
■展覧会期:2006年3月5日(日)→21日(火・祝)
■開館時間:午前10時→午後7時30分(8時閉場)
※最終日は午後4時30分まで(5時閉場)
■入場料:一般900円 、大高生700円、中学生以下は無料。
 
☆『パウル・クレー・センター』開館記念出版されたクレー本。
今回の展覧会の図録のような役割の本です。↓
クレーART BOX―線と色彩
クレーART BOX―線と色彩
日本パウルクレー協会
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パウル・クレーの芸術―その画法と技法と
パウル・クレーの芸術―その画法と技法と
西田 秀穂

ヒトラーと退廃芸術―「退廃芸術展」と「大ドイツ芸術展」
ヒトラーと退廃芸術―「退廃芸術展」と「大ドイツ芸術展」
関 楠生
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プーシキン美術館展

先週、国際美術館へ『プーシキン美術館展』を観てまいりました。
印象派からフォービズムそしてキュビズムへと至る、近代絵画の一時代を総括したかのようなセルゲイ・シチューキンとイワン・モロゾフのコレクション展示は大作こそ少ないものの見応え十分!大興奮!
平日なのに人、人、人の大盛況ぶりには驚きました。
いやー、世界の大金持ちコレクターってのは、レベルが違いますね。マティスの部屋やピカソの部屋と題して、部屋の壁という壁にマティスの絵やピカソの絵が張り巡らされている、彼らのコレクションルームの白黒写真が紹介されていたんですが、あれじゃ、名画のありがたみがまるでありません…。まるでアイドルオタクが部屋中にお宝写真飾ってほくそ笑んでるのと同じっす…。なんかあまりの金持ちっぷりに笑けてしまいました。
『プーシキン美術館展』展示作品の中では、
ゴーギャンの『浅瀬(逃走)』が一番の好み。↓
ゴーギャンの絵は、この『浅瀬』と『彼女の名前はヴァイルマティといった』の2点(あと版画2点もあり。)が展示されていたんですが、『浅瀬』は構図といい、色の塗り重ね方といい、『彼女の名前はヴァイルマティといった』よりも完成度が高いように感じました。(『彼女の名前はヴァイルマティといった』も構図自体はすごいけれども、色の塗り重ねかたが若干あらめな印象を受けた。)ゴーギャンの色の使い方はほんと最高です。『浅瀬』の浜辺へと続く砂地に薄いピンク色を使うあたり、色彩感覚がとんでもなくロックな男です。
しかもその発色の奇麗なこと!実際のゴーギャンの絵を見ると、図版、本等で見る彼の絵は、その良さをまるで伝えきれていないのがよくわかります。本物にはタヒチを安住の場と定め、現代文明を忌み嫌った彼の人間性がそこかしこに潜んでいるのが感じられます。
まあ、人間的には画家を目指してからは、社会から完全にドロップアウト。(画家になる前は株株式仲買人としてけっこう稼いでいたのだが…。)金もなく、タヒチで14歳の少女を愛人にしたりと、ロリコンで完全なる社会生活不適合者な男だったわけですが…。しかし、そういった人間的な歪みがあったからこそ、逆に彼の絵の輝きは増すように思います。心根の優しい、品行方正な人間が素晴らしい絵を描けるかといったら、そうとは言い切れないように、才能というものは人間性と必ずしも一致するわけではありません。むしろ何処か破天荒な、ネジの外れた人間に、天才的な才能を持った人物が多いというのは、神様も人が悪いというか、なんというか…。だからこそ、世界や人間の心は謎に満ちていておもしろいのかもしれません。
図版や、本で見るよりもイイ!と思った絵のもう一つは、
アンリ・ルソーの、
『セーヴル橋とクラマールの丘、サン=クルーとベルヴュの眺め』↓

この絵はパリ郊外のセーヌ川にかかるセーヴル橋の秋の情景を描いた作品です。空には飛行機、気球、飛行船がのどかに飛んでいるんですが、こんなに近い位置でそれらが一緒に浮かんでいるなんて、冷静に考えると何処かヘンで妙に幻想的。空のグレーが非常にきいていて、このグレーが画面全体に静謐さを醸し出してました。素朴で幻想的な絵です。
アンリ・ルソーはパリで税関職員をしながら休日に絵を描いていた、いわゆる「日曜画家」だったんわけですが、普通の日曜画家が、こんな幻想的な絵を描ける訳ねえじゃん!と思っちゃいます。彼の描くほとんどの作品は遠近法まるで無視。雑誌や写真、絵本などをもとに作り上げたコラージュ異世界です。ルソーの絵を見ていると不思議な感慨におそわれます。
絵画教育を受けていない彼の素朴でありながら夢想者の狂気を静かに孕んだ絵は、アウトサイダーアートともっとも近い位置にあるんじゃないかなあと個人的には思います。
そのほかにも近代絵画の父とよばれるポール・セザンヌのサント=ヴィクトワール山の絵もあり、モネ『白い睡蓮』、マティスの『金魚』ピカソ『アルルカンと女友達』などなど。実に多彩な作品群が目白押し!
正直、今回展示の目玉でもあるマティスの『金魚』の良さは僕にはわかりませんでしたが…。↓

マティスといえば初期作品『ブローニュの森の小道』も展示されていたんですが、こちらはフォービズムの面影残る良品。どちらかというとこちらの方が好きです。
そうそう、同時開催で収蔵作品展『コレクション4』も開催されていたんですが、こちらは人影がまばら…。プーシキン展チケットでこっちのも観れるのに、案外みなさん素通りっす。ジョルジョ・モランディの静物見れるし、カンディンスキーの『絵の中の絵』も見れる、現代美術では、ブラーのベストアルバムジャケ↓

ザ・ベスト・オブ

で有名ジュリアン・オピーの作品、ポール・オースターの小説『リヴァイアサン』の登場人物マリア・ターナーのモデルとなったアーティスト、ソフィ・カルの『B.C.W』も見れちゃう(これは『リヴァイアサン』でのマリア・ターナーの行動を実際にソフィ・カルが実行し作品化したもの。ポール・オースターの造り出した虚構をモデルとなったソフィが、自ら現実に再構築するという試み。)

リヴァイアサン
リヴァイアサン
ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸

本当の話
本当の話
ソフィ カル, Sophie Calle, 野崎 歓

なんとレイチェル・ホワイトリード
の作品も!(これは小品でちょっとがっかり…。)そしてなんと言ってもジョセフ・コーネルの『カシオペア』も展示されてる!
しかし、裏側が見えない展示とは…。この作品には裏側にも天体図のコラージュがあり、それも見れるように展示してほしかったですね。残念です。

これから国際美術館へ『プーシキン美術館展』を見に行かれる方は常設展示もじっくり見ることをおすすめします。意外と面白いですよ!

☆『プーシキン美術館展』
■国際美術館→http://www.nmao.go.jp/
■会期 2006年1月11日(水)〜4月2日(日)
■開館時間 午前10時〜午後5時、金曜日は午後7時(入館は閉館の30分前まで)
■休館日 毎週月曜日
■一般問い合わせ ハローダイヤル 06-4860-8600
■観覧料 
当日 一般1400円  大学・高校生1000円 中学・小学生500円
前売・団体 一般1200円 大学・高校生800円 中学・小学生300円

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オラファー・エリアソン 影の光展

原美術館へ『オラファー・エリアソン 影の光』展を見に行く。
オラファー・エリアソンは1967年、デンマークはコペンハーゲン生まれの現代美術作家。光、水、レンズを用いミニマルで美しいインスタレーションを展開する。


↑暗闇の部屋、天井あたりから水蒸気を降らせ、そこへ光を当てているインスタレーション。
光の加減で、水が七色に光って見える。
まるで小さな人口の虹、あるいは小さなオーロラのようで大変美しい。


↑壁一面に均一なオレンジの光が浮き上がって見えるインスタレーション。


↑室内の床にまでその光が映り込み、部屋全体が不思議な空間に。
じっとしていると、ここが日本なのか何処なのか?いったいいつの時代なのか?よくわからなくなる。

オラファー・エリアソンの作品は禁欲的な雰囲気を漂わせながらも、非常に美しくロマンティックな何か(言葉でうまく言い表せないが、あえて言うなら永遠という言葉が近いかなあ?)を心に感じさせる。
光を操る芸術家、ジェームズ・タレルの壮大な作品群とも似ている印象を受けた。 
エリアソンの作品を見て僕は、日常生活の中で見落としていた光の不思議・美しさを再発見させてもらえたように思う。

★オラファー・エリアソン 影の光 展
■会場:原美術館↓
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
■展覧会期:2005年11月17日(木)〜2006年2月6日(日)
■開館時間:11:00〜17:00
(祝日を除く水曜のみ20:00まで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし祝日にあたる1月9日は開館し、その翌日1月10日を休館)、年末年始(12月26日〜1月4日)
■入場料:一般1,000円、大高生700円、小中生500円

Olafur Eliasson (Contemporary Artists)
Olafur Eliasson (Contemporary Artists)
Madeleine Grynsztejn, Olafur Eliasson, Daniel Birnbaum, Michael Speaks
  
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生の芸術 アール・ブリュット展

東京は銀座にあります、ハウス・オブ・シセイドウにて開催中、
『生の芸術 アール・ブリュット』展に神奈川滞在時に行っていたんですが、これは濃い〜展覧会でした。”生の芸術=アール・ブリュット”ってのは、画家のジャン・デユビュッフェが1945年に作り出した言葉でありまして、美術の歴史や流行に左右されず、世間の評価もおかまいなしに、自らの心奧に沸き起こる、衝動によって生み出される芸術及び、その作品を指す言葉です。アール・ブリュットと呼ばれる作品を創りあげる人々は、様々な事情により普通の教育を受けられなかった人や、貧困、おかしな妄想に取り付かれている電波系な人であったり、精神病を患っている人など、言わば、社会生活から逸脱したアウトサイダーなのですが、僕には、お金や、評価、名誉などに目もくれず、ただひたすら自分の欲望のまま、純粋にものを創り、自我を表現し続ける彼らのほうが、社会に適応して、ただなんとなく日々を過ごしている人々(我々?)よりも、よっぽど正常なのではないかと思ったりします。
『生の芸術 アール・ブリュット』展では、そういったアール・ブリュットの59作家、約80点の作品が展示されていました。(これだけの作品が見れて無料ってのはスゴいです!)
今回、僕がもっとも楽しみにしていたのは、ヘンリー・J.ダガーという人物の作品。ダガーはシカゴの病院で清掃人として働きながらも、夜になると自分の部屋に閉じこもり、誰にも知られず人知れず、7人の美少女姉妹ヴィヴィアン・ガールズがグランデリニアンという残虐な男達と壮絶な闘いを繰り広げる、架空の壮大な叙事詩『非現実の王国における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、あるいはグランデニリアン大戦争、あるいは子供奴隷の反乱に起因するグランデコ対アビアニアン戦争』を一生をかけて書き続けていたのです。15,145ページにおよぶその物語には三百枚もの挿絵が描かれていました。ダガーさん…ヤバいです。超妄想人間です。ちなみに一生を通して性的な知識も経験もなかったダガーは、女の子と男の子の下半身の違いをつゆ知らず、挿絵に描かれたヴィヴィアン・ガールズ達には男性器がちょこんと悪意なく生えているのです。ダガーさん…ヤバいです。超妄想人間かつ…なんか…可愛そう…。そんなヘンリー・J.ダガーの挿絵が今回の展覧会で見れたわけで、僕的には超感動〜だった訳です。今までは本でしか見たことのなかった、妄想王国の一端は、水彩絵の具の鮮やかな色彩に彩られたガーリーなぬりえ万華鏡って感じで、ヘンリー・J.ダガーの心の深淵のほんの一部を覗けた気がしました。この挿絵に描かれているたくさんの少女達(ヴィヴィアン・ガールズ)はダガーさんが膨大な数集めていた少女写真や雑誌に載った少女達をカーボン紙で写しとったもの。…う〜ん超マニアックダガーさん!ヤバいっす!…ここまでやられるとヤバさ通り越して、なんか俺…感動っす。
ダガーの作品は彼の死後、ダガーの家主であったネイサン・ラーナー氏に発見され保存、世間に知られることとなったのですが、もしネイサン・ラーナー氏のような芸術に理解ある人物以外の人が発見していたなら、きっとダガーの頭の中に存在していた、壮大な世界は世間に知れ渡ることはなく破棄されていたと思われます。そう考えると、今も人知れず恐ろしいまでの妄想世界を芸術として昇華しつつも、世間に全く知れ渡ることなく隠者のように暮らしている真の芸術家が世界の何処かにいるのかも知れません…。

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
ジョン・M. マグレガー, John M. MacGregor, 小出 由紀子

『生の芸術 アール・ブリュット』展、ダガーの他にも、凄まじい自己世界を持った作品が目白押しでした。精神病院で描き続けたマルティン・ラミレスの鉛筆画。ビル・トレイラーのイラストレイター顔負けのキャラクターセンス。「画家になるだろう。」という神のお告げを聞き、レオナルド・ダ・ヴィンチの霊に導かれていると信じ込み、抽象的な細かい模様を緻密にシンメトリー(左右対称)にカンバスに描き込んだオーギュスタン・ルサージュなどなど。
どの絵も、人間の持つ何かを表現しなければならない、描かねばならないという原始的な欲求に突き動かされ描かれたものばかりで、ものスゴいパワーにあふれ、僕は軽い目眩のあとに奇妙な興奮を味わいました。なかでも、僕が今回の展覧会で一番気に入ったのは、オーギュスト・フォレスティエのオブジェ作品。木彫りの人形に、鉄、布、釘、ブリキ、羽等を貼付け、奇妙な動物の形にしているんですが、これが、かわいいような不気味なような、なんともいえない魅力的な形をしてるんです。『生の芸術 アール・ブリュット』展の作家説明の紙によると、彼が死ぬまで過ごした精神病院で、これらの作品を並べて販売していたらしいです。そのシュチュエーションもスゴいものがありますが、もし彼の作品がそんなふうに売られているのを目撃していたなら間違いなく買ってましたねえ、きっと!!

★オーギュスト・フォレスティエ(auguste forestier)の作品が見れるサイト(英語です。)↓
http://www.abcd-artbrut.org/article.php3?id_article=36

そうそう、ハウス・オブ・シセイドウの自動扉ってデカイっすね!…初めて訪れたんですが
自動扉を通るとき、微妙なセレヴ気分を味わいました。 

★『生の芸術 アール・ブリュット』展
■会場 HOUSE OF SHISEIDO(ハウス・オブ・シセイドウ)↓
http://www.shiseido.co.jp/house-of-shiseido/html/exhibition.htm
■展覧会期:2005年9月27日(火)〜2005年11月27日(日)
 毎週月曜休
■開館時間:11:00〜19:00(入館は18:30まで)
■入場料:無料



   
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ホルスト・ヤンセン展

画狂人ホルスト・ヤンセン―北斎へのまなざし
画狂人ホルスト・ヤンセン―北斎へのまなざし
ホルスト・ヤンセン

10月の16日までということで、梅田の大丸ミュージアムへ 『ホルスト・ヤンセン展』をみてまいりました。
ホルスト・ヤンセンは1968年にヴェニス・ビエンナーレで版画大賞を受賞した20世紀ドイツを代表する画家であり版画家です。
美術学校時代にはポール・ヴンダーリッヒが1年先輩におり、後年ヤンセンはヴンダーリッヒから銅版画技法を習ったそうです。
ひーっ!羨ましい…。
わたくし、10数年前にヴンダーリッヒの展覧会を見て以来(今はなき、ナビオ美術館で開催されてました。)彼の作品(特に彫刻作品。)のファンであります。
して、ヤンセンの版画や素描は、ヴンダーリッヒの作風に負けず劣らずの陰鬱っぷり…。
ヤンセンの自画像シリーズに宿る息苦しさと言ったら…。わたくし、二日酔いの朝のような気分にさせられました。さすがは画狂人北斎を師と仰いだ男。絵から湧き出てくる気迫たるや、すさまじいものがありました。この展覧会を見終わったあと僕はかなり疲れました。(もうパワー吸われまくり…。)ホルスト・ヤンセン…写真を見る限り、かなり神経質そうな男です。この人ヤバいです。かなりイっちゃってます。しかし、そこが芸術家らしくていいんだなあ。しかも女性にかなりもてたらしいです。(うらやましいねっ!)写真を見るとホンマかいな???って思いますが…。
きっと常人にはないすんごいフェロモンでてたんやろなあ…。

★するどく研ぎ澄まされた神経質な線。芸術家の夥しい数の自画像は、自己思索と自己愛の狭間を絶妙な度合いで彷徨う。
その振幅がヤンセンの絵の魅力。
フュリス、北斎の春画に影響を受けた性愛図。熱を孕んだエロティックな美しさは、どこかエゴン・シ−レの素描とも通じるところがあるように思う。なにより考えぬかれた構図が素晴らしい。

『ホルスト・ヤンセン展 ―北斎へのまなざし― 』
大丸ミュージアム(大丸梅田店15階)
■会期 2005年10月5日(水)→16日(日) (会期中無休)
■入場時間 午前10時→午後7時30分(午後8時閉場)
 *最終日は午後4時30分まで(午後5時閉場)
■観覧料金 一般900円、大高生700円 中学生以下は無料
   
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杉本博司 時間の終わり

9月の中頃から仕事で関東方面に行くので、その合間をぬって展覧会に行こうと目論どります。
いや〜、東京方面はいい展覧会やりますねえ!
とりあえず是が非でも行こうと思っているのが、
『シュヴァンクマイエル』展 
ローリー・アンダーソン『時間の記録』展 
■杉本博司『時間の終わり』展の三つ。
行ければいいなあ…と思っているのが、
『Brassai ブラッサイ ポンピドゥーセンター・コレクション』展 
やなぎみわ『無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語』展 
『イサム・ノグチ』展あたり…。
う〜ん、かなり楽しみな面子。全部行けたらいいなあ…。

んで、今日のお題は杉本博司『時間の終わり』展であります。
杉本博司さんはニューヨークを拠点に活動されているアーティスト(写真家)です。杉本さんは日本よりも海外で有名なんですが、これは彼が商業写真ではなくアートとしての写真作品を発表しているため、メディアなどの露出が低いためであることと、日本では芸術が文化として根付いていないことに起因するとのではないかと個人的には思っています。
僕がはじめて見た杉本博司作品は…
『海景(seas scapes)』シリーズ。
これは水平線を挟んで、画面をほぼ2分割にし、上部に白くぼやけた空、下部に波の小さな海がただ写っているモノクロ写真。被写体をシンプルな形で印画紙に焼きつけた作品でした。しかし、よく見るとシンプルな画面構成でありながら、日本の水墨画を思わせような濃淡を画面のそこかしこに見つける事が出来ます。瞑想中の哲学者の頭の中に広がる景色は、この海景(seas scapes)に写る静かな世界のような感じなのではないかと思いました。
まさに静寂の世界!!(コールドプレイ!?)
と言った趣に僕はかなり衝撃を受けたのを覚えています。 
杉本博司さんの写真作品はほとんどがモノクロで画面構成も極めてミニマム。しかし、見る側はそれらのシンプル写真から多くの事柄(記憶、時間、世界etc…)を感じ取ることができると思います。
●映画1本分を露光し続け、スクリーンに真白な光を現出させた『劇場』シリーズ
●意図的に焦点をぼかして建築を撮り、建築家の脳内に浮かんだイメージを印画紙の上に現出させた『建築』シリーズ
●自然史博物館のジオラマ展示を撮影し、作り物の動物や景色を本物のように見せる『ジオラマ』シリーズ
などが作品シリーズとしてあるんですが、どの作品もすべて静謐な美しさを内包していて、見るたびその写真技術のスゴさに感動し驚かさせられます。
森美術館での杉本博司『時間の終わり』展、今から非常に楽しみです!! 

なんと9月15日号の雑誌ブルータスは『杉本博司』特集号!
ニューヨークのアトリエを見れたり、主要作品解説があったりと、かなり濃い内容でビックリしました。600円だしお買得だと思います。これは思わず買ってしまいました。
★ブルータス『杉本博司』特集号↓
http://www.brutusonline.com/brutus/issue/index.jsp

★杉本博司初の評論集『苔のむすまで』も発売されとります。
写真も多数収録。カバーの裏側に作品『sea of buddha』が印刷されていたりと装丁も凝っています!
苔のむすまで
苔のむすまで
杉本 博司
↑ちなみにこの表紙に写るぼやけた建造物はニューヨークのワールド・トレード・センター。1997年に撮られた写真だそうです。墓標のような佇まいは、まるでテロによる崩落を予言していたかのようにも写ります…。あの9月11日、杉本博司さんはニューヨークにいたそうで、その時のこともこの本に書いてありました。 

★杉本博司『時間の終わり』展
■期間:2005年9月17日(土)〜2006年1月9日(月・祝)
■場所:森美術館(森タワー53階)
森美術館HP↓
 http://www.mori.art.museum/html/jp/index.html
■時間:10:00〜22:00|火10:00〜17:00|いずれも入館は閉館時間の30分前まで
 ※11/22(火)、1/3(火)は22:00まで開館時間を延長
(但し10/19(水)は休館、10/20(木)、1/4(水)は17:00閉館)
■料金:一般?1,500、学生(高校・大学生)?1,000、子供(4歳以上-中学生)?500

    
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シュヴァンクマイエル展

シュヴァンクマイエルの博物館?触覚芸術・オブジェ・コラージュ集
シュヴァンクマイエルの博物館?触覚芸術・オブジェ・コラージュ集
 
『シュヴァンクマイエル』展やりますよ!
神奈川県立美術館葉山で9/10から11/6まで開催されます。
行きてえっ!!
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/
exhibitions/2005/Svankmajer050726/index.html
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拘束のドローイング マシュー・バーニー

THE CREMASTER CYCLE
THE CREMASTER CYCLE
Matthew Barney, Nancy Spector

マシュー・バーニー『拘束のドローイング』展ついに見てまいりましたin金沢21世紀美術館!
まず、映画(というより映像作品。)『拘束のドローイング9』を見てから『拘束のドローイング』の美術館展示。んで、7月2日に金沢21世紀美術館内でおこなわれたマシュー・バーニー/アーティスト・トークのビデオ録画映像の順番で見ました。(展覧会未見の方はこの順番で見ることをオススメします。この順番で見るとマシュー・バーニーの頭ン中が少し?わかった気になれます。・・・まあ、理解した気になるだけですが。)
では、わたくしの感想いってみましょう。
まず映画、これは・・・『和モノコスプレ、マシューくん、ビョークちゃんのトンデモ捕鯨船社会見学!!ついでにお茶会やって、勢いあまって変身しちゃいました。私達スッゴク仲良しでしょ。テヘッ。(チラリ!?もあるよ。)』ってな内容(個人的主観です。)
・・・芸能人水泳大会タイトルらしく書いてみたものの・・・わけわかりませんね。
とにかく、この映画はマシュー・バーニーの強烈な変身願望に対するオブセッション(強迫観念)を日本の捕鯨文化と融合、神話化させ、それを具現化したものです。って、これまたわけわかんねえな・・・
ようするに、マシュー・バーニーは変身や変容に妙に固執するスーパーコスプレイヤー人(スーパーサイヤ人みたいに言ってみた。)で、そんな男が変身に対する興味と、ありったけの愛を込めて造り上げた変身一大叙事詩なわけです。 
まあ、コスプレ大好き親父の映画ってこと!
しかし、バーニーがそこいらの女装コスプレ親父と一線を画しているのは、アートセンスの抜群の良さとビョークが嫁はんってことです。場面場面の構図、色彩構成の一つ一つが実に練られている映像はさすが芸術家。オープニングのお祭り調、阿波踊り行進場面の色彩の豊かなこと!2時間半に及ぶ、これといって抑揚のない平坦な物語を支えているのは類い稀なアートセンスと、そしてビョークのコンポーザーとしての才能を遺憾なく発揮した、インストルメンタル音楽の数々でしょう。個人的にはそんなに好きじゃないんですが、やっぱビョークはスゴイですよ。映像と音楽でなんとも不可思議なバーニー神話を造り上げていました。
2時間半セリフほとんどなしの映画を見て寝なかったのは、わたくしこれが初めてかもしれません。まあそれでも、僕個人の意見としては明らかにマシュー・バーニーの想像力と物語性に映画が追いついていない感じは否めませんでしたが・・・。
きっとバーニーの頭の中にある映像はもっとスゴイものなんじやないかと美術館展示作品を見て思いましたね。
僕の場合、映画『拘束のドローイング9』よりも、過去の拘束のドローイングシリーズも展示されていた美術館展示のほうが数倍興味をもちました。(館内で貸し出されている音声ガイドは借りてソンはなし!展示されている作品のことが理解しやすくなり、かなりオススメ!)
なにより、シリコンや強化プラスチックを使った作品の完成度の高さが素晴らしい!
特に『拘束のドローイング8』シリーズ!
透明で少し緑がかったアクリルケースに収められた、ドローイング作品のカッコええこと!少し流線形を帯びた優美なアクリルケースのカタチの美しいこと!バーニーはんは、このアクリルケース何処に発注したんだろうか?造りがほん・・・っとに綺麗。とてつもなくいい仕事です。
これ、僕が金持ちだったら間違いなく購入してましたね。
あと初期拘束のドローイングシリーズに使用した器具を硝子(アクリル?)ケース(ふちはプラスチックカバー)に収めたオブジェ的作品もマルセル・デュシャンのレディ・メイド作品とどこか似通ったとものを感じ、かなりそそられました。これらのケースも完成度が高く、造りが実に丁寧。マシュー・バーニーはマテリアル選びが実に卓越したアーティストですねえ。そして作品それぞれに妥協点がないあたり、かなりの完璧主義者だと思われます。
ちなみに拘束のドローイングシリーズってのは、筋肉に負荷をかけて鍛練をすると、一時的に筋肉は痩せ衰えるけれど、その後、筋繊維が増え肥大する。ようするに、筋肉は負荷をかけるほどに(拘束を与えるほどに)大きくなるんだけど、これをドローイングに置き換えて、様々な拘束(負荷)を受けつつ、絵を描いたら頭も筋肉みたいになんか変化するんかねえ〜?ってのをコンセプトとし、バーニーのイタイ?(失礼。)科学&哲学的信念のもと、おお真面目に実践している映像(トランポリンにのって飛び跳ねて天井に絵を描いたり、フットボールのトレーニング用の器具を用いて自分に負荷を与えつつ絵を描いたり・・・。)が作品となっています。
で、そこに彼の元来のコスプレ(変身)願望をミックスしちゃったのが、ギリシア神話に登場する半獣半人のサテュロスに変身し、狭苦しいリムジンの中で角により何かを描こうとしている『拘束のドローイング7』。で、さらに勢い増して、鯨の変容(鯨→鯨油)と人間の変容(人間→鯨)を映像というカンバスに描き付けたのが今回の『拘束のドローイング9』なわけです。
う〜ん!突き抜けちゃってますねえ!バーニー先生! 
僕はこういうへんてこ(たぶん、本人は大真面目。)なひとが大好きです。
かっこよすぎ! 

最後にマシュー・バーニーのアーティスト・トークのビデオ録画映像を見て思ったんですが、かなり日本文化及び捕鯨についてリサーチしたようです。(まあ、捕鯨船の中に茶室がある時点でおかしいんですけど・・・バーニー流ファンタジーですからっ!ってことで・・・。)
日本の捕鯨問題に関しても、西洋的な見方ではなく、もう少しおおきな視点で見られてるようで、『拘束のドローイング9』も捕鯨問題に言及する作品では全くなく、(『STUDIO VOICE』8月号には、どちらかと言うと日本人よりの意見がインタビュー記事として載っていました。)ただ彼の思い描く変容に関する物語神話を造り上げていったといった感じでした。
アーティスト・トークでは伊勢神宮の式年遷宮(20年ごとに神殿を建て替え、御神体を移す儀式。)についての言及もあり、ラストにおこるフレンジングデッキの崩壊と再生の場面との関係を示唆されていました。『拘束のドローイング9』に登場する奇妙な料理も太一(和歌山県)の鯨料理からインスパイアを受けたらしく、そういった日本の地方独特のものとの関係性も興味深く。知れば知るほど、マシュー・バーニーの緻密な妄想神話世界に引きずりこまれてゾクゾクしました。
僕は個人的に物語を想起させるものや、そういった作品が凄く好きです。
アーティスト・トーク最後に女性の方が「この映画に対する内面的な思いは?どんなものでしょう?」という質問を投げかけ、マシュー・バーニーは最後に「希望がテーマであり、希望を見い出してほしい。」と言ったようなことをおっしゃってました。
変身と変容に希望を見い出す男、マシュー・バーニー。
僕は”輪廻転生、人もカタチをかえ生まれ変わる、もしくは、無機物となり土に帰り、土というカタチに変容する、その土の上に木が育ち、また世界は回る・・・”といった連想をなんとなくしました。
僕の中のベストコスプレイヤー、マシュー・バーニー!
自らの作品に希望を託すなんて、あんたは、なかなかあなどれん芸術家でありますよ!
(でも、正座は・・・ほんとヘタ・・・。)


 
↑『拘束のドローイング8』シリーズ。

↑『拘束のドローイング』展図録予約購入で貰っちゃった『拘束のドローイング9』のエンブレムシール。 

☆マシュー・バーニーの過去記事はコチラ↓
http://akirart.blog.bai.ne.jp/?eid=8767
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ヨドコウ迎賓館 神戸らんぷミュージアム

フランク・ロイド・ライト全作品
フランク・ロイド・ライト全作品
William Allin Storrer, 岸田 省吾

●雨の日に食堂に行くには屋根のないところを通らなければならず、必ず濡れてしまうおちゃめ?な某芸大からの同窓であるY君のオススメスポット、兵庫県は芦屋市の山手という高級住宅に荘厳と佇む『ヨドコウ迎賓館』に行ってまいりました。設計は名前からしてかっちょよい、建築界の巨匠フランク・ロイド・ライト氏であります。そのむかし、灘の酒造家8代目の山邑太左衛門(やまむら たざえもん)の別邸として建設されたというこの邸宅、西洋と和のイメージを合体させた、独特な趣を感じさせる、さすがはお金持ちさんが住んでいたお家でありました。樹木や草花などを抽象化した壁面の飾り窓、葉をモチーフにした飾り銅板(わざわざ銅を腐食し緑青(ろくしょう)を発生させ、葉の色に近づけているとこがスゴイ!)などの凝った意匠が目白押し。フランク・ロイド・ライトの凝り性っぷりに圧倒される建物でありました。 
ここ絶対掃除が大変な家です!(まあ、お手伝いさんが掃除してたんでしょうけど・・・。)
2回の応接間の天井横に湿気対策としての通風孔が何十個も連なってあるのですが、日本独特の梅雨や秋の長雨、台風などにライトの考えが至ってなかったらしく、この通風孔のせいでかなり雨漏りしたらしいです。なにごとも凝りすぎはよくないのかも・・・。
雨漏りしてたって・・・
かなり致命的な欠陥なんじゃ・・・
巨匠のくせに・・・ちょっとお間抜け。
なんか雨漏り問題により、天才ライト氏にちょっと親近感がわいた日でした。

★『ヨドコウ迎賓館』
http://www.yodoko.co.jp/geihinkan/



●『ヨドコウ迎賓館』行ったついでに、神戸にまで足をのばし、『神戸らんぷミュージアム』にも行ってまいりました。
むかしのらんぷのデザインってなんかよい。 
とくに気に入ったのが中国から日本に伝来したといわれる、
”ねずみ短檠”。
ねずみを形取った油容器を灯柱の頂部に置き、火皿の底にあけられた小さな孔を通る空気圧を利用して、ねずみの口から油を補給し、一定の明るさを長時間保つという代物。構造もさることながら、ねずみの口から油がポタポタと火皿に落ちる瞬間のおつなこと!実にわびさびならんぷっす。こういう遊び心のあるものが僕は大好きです。 
 
★『神戸らんぷミュージアム』
http://www.kobe-lamp.com/
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ミヒャエル・ゾーヴァ展(その2)

ミヒャエル・ゾーヴァの世界
ミヒャエル・ゾーヴァの世界
ミヒャエル・ゾーヴァ, 那須田 淳, 木本 栄

昨日、JR京都駅の美術館「えき」KYOTOで開催されている『ミヒャエル・ゾーヴァ展』に行って来た。外は生憎の雨模様。雨とゾーヴァ。なんとなく悪くない気がした。雨の日に絵を見るというのも、なかなか乙なものだと思う。JR京都駅のみどりの窓口で前売り券を買って(当日券より200円安いので、ちょっとお得感アリ。)さっそく会場へ。客層としては、やはり若い女の子率高し。というか、ほとんど若い女の子。あとは若いお二人さん。(女の子に男の子が無理矢理連れて来られた感強し。)が何組か。で中々の盛況ぶり。 初めて見るゾーヴァの原画は思っていたより小さかった。(4〜5点でかい作品もあり。) この人、細かい作業すんのが好きなんやろなあ・・・。と強く思わせる筆遣いっぷり。生い茂る木の葉の描写は、シュルレアリスムの画家、ルネ・マグリットの描き方にかなり近い感じで、手のかけ方が半端ない。これでもかっ!ってぐらい描き込んである。そこがなんともよかった。 どの絵も、男の自分がいうのもなんだが、ほんとかわいらしい。そして、アイデアが素晴らしい。見ていると、その世界観についつい引き込まれてしまう。よくみると、ただかわいい絵というだけでなく、どこか皮肉めいた、画家の冷徹な眼差しをもって描いた描写もあり、あたたかみと冷たさ、かわいさと皮肉が、絶妙なバランスで絵の上にのっかっている感じがした。そこが実に魅力的でゾーヴァをプロの画家たらしめているところなんだと思う。画集『ミヒャエル・ゾーヴァの世界』に書いてあったが、彼はテレビがかなり好きで、仕事中も映像を流し続けているらしい。そういえば、彼の絵の構図や雰囲気はどこか、外国のおもしろいCMの1シーンに似ている気がする。
会場にはもちろん映画『アメリ』に登場していた『病気の犬』『ガチョウ』『病気のワニ」の絵もあり、おもしろいところで言えば、アメリのベッドサイドにあったブタのランプもかざってあった。映画つながりで言うと、ミヒャエル・ゾーヴァ氏は『ウォレンスとグルミット』の最新作『ウエアラビットの呪い(仮題)』(日本では2006年初春劇場公開予定)にも参加している。その映画のラフ・スケッチも展示されていて、それも実に興味深かった。最後の、画集、絵本、ポストカードなどのグッズ販売コーナーは黒山のような人だかり。これだけグッズが売れている展覧会ってのもスゴイなあ・・・。とミヒャエル・ゾーヴァ人気に感心しきり。かくいう僕も画集収集マニアとして、金もないくせに、しっかり画集だけは購入。家に帰って、ページを捲りつつミヒャエル・ゾーヴァの世界を再堪能。来年の『ウォレンスとグルミット、ウエアラビットの呪い』楽しみだなあ・・・。

『ミヒャエル・ゾーヴァ展』↓
http://plaza.harmonix.ne.jp/~artnavi/
12publicty/170703-isetan-sowa/00isetan-sowa.html

『ウォレンスとグルミット・ウエアラビットの呪い』↓ 
http://www.sonymusic.co.jp/MoreInfo/
Chekila/wandg/news/index.html
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ミヒャエル・ゾーヴァ展

ミヒャエル・ゾーヴァの世界
ミヒャエル・ゾーヴァの世界
ミヒャエル・ゾーヴァ, 那須田 淳, 木本 栄


ミヒャエル・ゾーヴァ展が美術館「えき」KYOTOで、今日から開催されている。ミヒャエル・ゾーヴァは、映画『アメリ』でアメリの住む部屋のベッドの上に飾られていた、犬と鳥の絵を描いたドイツの画家である。今週末にでも行ってこようと思う。楽しみだ。 

☆ミヒャエル・ゾーヴァ展感想はコチラ↓
http://akirart.blog.bai.ne.jp/?eid=5611
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シュテファン・バルケンホール展

Stephan Balkenhol
Stephan Balkenhol
Stephan Balkenhol
国立国際美術館に『シュテファン・バルケンホール、木の彫刻とレリーフ』展を見に行った。バルケンホールはドイツの現代彫刻家。現代人(白いシャツに黒いスラックスをはいた何処にでもいそうなおじさん。このモデルはどうやら作家本人っぽい。)や、童話ブレーメンの音楽隊から抜け出て来たような動物達の彫刻や、巨大な大聖堂の彩色レリーフ作品(遠くから見ると絵に見える。近寄って見ると、版画のように板を彫り込み彩色しているのが分かる。版の凸凹感がなんともいえず良い!)などなど、約50点あまりの展示。
ところどころ木の削り痕を、さかむけのように残している荒削りな仕上げの木彫は、形が非常にユーモラスで、彫像それぞれにすっとぼけたオーラをかもしだし、じっと見ていると美術館にいるのになんとなく笑いが込み上げてくる。特に動物シリーズの黒いプードルの形はなんともかわいらしく(ちっちゃな子供が楽しげに作ったって感じ。)バルケンホールって子供がそのまま大人になっちゃったような人なんじゃないか?という思いが頭に浮かぶ。現代美術にありがちな小難しさがないのが見ていて実に心地よい。素朴で荒削りな作風は日本の円空仏を彷佛とさせ、さながら現代版ドイツの円空仏師の趣き。わざと荒削りなところを残しつつも、よく見ると細かいところはやたらと丁寧につくりこんでいて、芸が非常に細かい。一見、おおらかな作風ながら、実は以外と神経質に作り込んでいるあたり、まさにドイツ人気質の面目躍如。こういう細かいところにこだわりを持つ作品、僕は大好きであります。

 
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マルセル・デュシャンと20世紀美術展

デュシャンは語る
デュシャンは語る
マルセル デュシャン, ピエール カバンヌ, Marcel Duchamp, Pierre Cabanne, 岩佐 鉄男, 小林 康夫

マルセル・デュシャンと20世紀美術』展。新しく移転開館した国立美術館開館で見て来た。デュシャンのレディ・メイド作品(ただの便器、帽子掛け、櫛)を真剣に美術作品として見入る人達を遠巻きに眺めて、なんともこっけいな光景だなあと思いつつ、同じようにデュシャンの作品に見入る僕も、はたから見ればこっけいであり、デュシャンという芸術家の掌の上でまんまと転がされている気分。大勢の人が「ただの便器やん・・・。」と言ってしまえばそれまでなのに、その一言を言わせず、崇高な芸術作品にまで便器を高めたデュシャンのカリスマ性はある意味宗教チック。死んでなお影響与え過ぎデュシャンである。そんな人を小馬鹿にしたような作品を創造したデュシャンの人間性に僕は無性に惹かれる。しかし、新しい国立美術館。僕は地下に広がる展示空間がいまいち好きになれなかった。地下なので閉息感を強く感じたせいかもしれない。小林健二展を見に行った福井市美術館みたいな建築物のほうが僕は好きだ。螺旋状に上へ上へと展示通路を登ってゆくのがとてもよかった。まるで野又穣氏の描いた塔の内部を登っているような感覚は忘れ難い。地下に沈んでゆくよりも、上へ上へと空に近づく美術館が増えればいいのになあと思った。 

☆マルセル・デュシャンに関する過去記事はコチラ↓
http://akirart.blog.bai.ne.jp/?eid=14041
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